ZAGAR「Wings of Love」


YouTubeでいろいろ音源を検索していてハンガリーのエレクトロニックミュージックのシーンが非常に熱いことをはじめて知った。おもしろそうだと思っていろいろ情報を検索したのだが、この辺に関しては日本語の情報が全然ない。頭にきたのでこのシーンとそれを牽引するバンドたちについて調べたことを紹介していきたい(ああ、マジャール語が読めるようになりたい)。
まず最初に衝撃を受けたのがこのZAGARの「Wings of Love」。
トラッドミュージック風のバイオリンにサンプリングとスクラッチが重なる印象的なオープニングから思いもよらない意外な展開をしていくこの曲では、トラッドでもテクノでもジャズでもロックでもない、これまでに聞いたことのないような新しい音楽が鳴っている。
これはちょっとスゴイなと思って説明を見たのだが、どうやらこのバンドはハンガリーのインディーバンドで、この曲のゲストボーカル「The Underground Divas(アンダーグラウンドの歌姫たち)」はそれぞれハンガリーのインディー/アンダーグラウンドシーンでは著名な女性アーティストであるらしい。
個人的にこういうスターシステム企画は大好きなので、歌姫たちの素性をそれぞれ調べてみたのだが、行き当たるバンド行き当たるバンド全部がエラくカッコいい。それでまあ、このシーンはひょっとしてものすごくおもしろいんじゃないかと思って本式に調べはじめたのだが、コレが本当におもしろかった。
このZAGARというバンド、英語版のWikipediaによれば

Žagar (or Zagar)はハンガリーのエレクトロニックミュージックシーンを牽引するグループである。
彼らのサウンドは現代のエレクトロニックミュージック、ジャズ、インディーロックなどをベースにDJ Bootsieによる実験的なスクラッチを加えたものである。そのサウンドは結果として重いビートと60年代のサイケデリックミュージック風の雰囲気と音色を備えることになった。
http://en.wikipedia.org/wiki/%C5%BDagar

という存在だという。単なる偶然だが、シーンのトップバンドのひとつを引き当てたわけでカッコいいのも道理だったわけだ。メンバーは
Balázs Zságer aka Zagar > fender rhodes, keys, programming
Andor Kovács > guitar, bass
DJ Bootsie > scratches
Tibor Lázár > drums
の四人、名前をどう発音するのかとか聞かれてもわからないので聞かないように。
以下に彼らの公式ページからバンドプロフィールを引用する。

このバンドのストーリーは2001年にはじまる。当時現在のメンバーのうち3人(Zságer, Kovács, DJ Bootsie)がYonderboi Quintet(訳注:16歳でデビューした天才少年アーティスト「Yonderboi」のユニット)に参加しアルバム「Shallow and Profound」ツアーをおこなっていた。このツアー後に彼ら三人はQuintetを離れ独立したバンドとしてリハーサルをはじめる。まず彼らはPulzus名義で活動を開始、楽曲は彼らがリハーサルでつくりあげた素材を事前にZságerがシンセで作曲していた曲を掛け合わせたもので、そこから彼らはこの新しいバンド特有の音をつくりあげていった。
2002年夏には彼らはZagar名義でハンガリーや他の国のフェスティバルに参加、その後デビューアルバム『Local Broadcast』を制作した。このアルバムはストリングカルテットをフィーチャーしている他、多数のゲストアーティストが参加、そのうちのひとり、ボーカリストのGyörgy Ligeti(The Puzzle)はかつて彼らとThe Endというバンドを組んでいた友人である。
『Local Broadcast』は2002年、ハンガリーではUCMG/Ugar records、オーストリアではUniversal Jazzから発売され、国内外のプロフェッショナル、コレクターから熱烈に歓迎された。このアルバムは音楽誌『wan2』の企画、ハンガリーオールタイムベストアルバム50選に選ばれている。結成以来このバンドはハンガリーのみに止まらず、オーストリア、ドイツ、オランダ、イタリア、スロヴェキア、チェコ、ロシアでライブをおこなっている。
http://www.zagarmusic.com/biografia_en.php

これまで発表された主要なアルバムはデビュー作『Local Broadcast』(2002年)、映画のサントラ『Szezon. Eastern Sugar』(2004年)、そして昨年発表されたセカンドアルバム『Cannot Walk Fly Instead』(2007年)。とりあえず聞ける曲はだいたい聞いたが、おそろしく音楽性の幅の広いバンドで一曲ごとにほとんど別のバンドのようにスタイルが違う。その癖そこには共通する芯が一本通っており、どの曲も聞いたことのない独自の音楽になっている。
たとえば映画『Szezon. Eastern Sugar』のサウンドトラックでGyörgy Ligetiをボーカルに迎えた「Eastern sugar」などは完全なマージービートのサイケデリックナンバー(しかしどこかニセモノっぽい)だし、ファースト収録の「Taste of snow」アンビエントなハウスだと思って聞いていると途中からなんだかおかしなことになる。
この「Wings of Love」は昨年発売された『Cannot Walk Fly Instead』に収録されたナンバーで当然のようにシングルカットされ、ハンガリーのチャートではかなりヒットしているようだ(具体的なところまでは調べがついていない)。
なお、Divaたちの正体は、ビデオ左から
Juci Nemethハンガリーでこの手の音楽のシーンを切り開いたバンド「Anima Sound System」の元メンバーで現在リーダーバンド「nemjuci」を主催する女性アーティスト。
Eniko Hodosi:これもシーンのトップバンドのひとつ「Neo」の女性ボーカリスト
Sena:ガーナ出身のヒップホップアーティスト。
Judie Jay:ジャズ、ラウンジ系のソロアルバムが二枚ある女性アーティストで現在ダブ、ヒップホップ系のバンド「BEAT DIS」にボーカリストとして参加。
Peterfy Bori:女優でトラッド/フォーク系のバンド「Amorf Ordogok」にボーカリストして参加していた女性アーティスト、現在リーダーバンド「Peterfy Bori & Love Band」を主催。
Edina Kutzora:Yonderboiの現在のライブユニットYONDERBOI and the Kings Of Oblivionにボーカリストとして参加しているジャズ系の女性シンガー。
関連リンク:
Zagar My Space
http://profile.myspace.com/zagar
Zagar Official Site
http://www.zagarmusic.com/
Zagar Official Blog
http://zagar.freeblog.hu/
マジャール語、読めん……